2008年1月 4日 (金)

直江山城守(1)

24ko1 左作品は、三代豊国の『當櫓看板揃』シリーズの山本勘助(河原崎権十郎)と直江山城(板東彦三郎)です。NHK大河ドラマ『山本勘助』を見た方には、山本勘助と対峙するのは、緒方拳演ずる宇佐美定満ではないかと思われるのではないでしょうか?宇佐美は越後の軍師格と目される人物ですし、年齢的にも勘助と釣り合います。

 ところが、浮世絵に描かれているのは、度々指摘しているとおり『本朝二十四孝』という江戸時代流行した歌舞伎で、そこでは、横蔵(後の山本勘助)と慈悲蔵(後の直江山城)とが互いに武田方と越後方への忠義を競い合います。したがって、役者絵に描かれる勘助は、多くの場合、直江と一対に描かれることが多いのです。横蔵という名前からも解るとおり、勘助はヤンチャな人物として、一方、直江は慈悲蔵という名からも想像されるように、まじめな人物として仕立てられています。曾我兄弟を彷彿させますね。実際に、勘助と直江は、なんと兄弟という設定です。

 史実と係わりのある浮世絵を見る際、描かれた内容と史実とを比べてしまいますが、描かれたドラマを読み解くことが先決です。さもないと、浮世絵を手に入れて楽しんだ庶民の気持ちから遠く離れてしまいます。川中島合戦を描く作品には、時として、史実から離れて活躍する武将が登場します。これも、当時庶民に普及していたドラマ、講釈、伝承などの影響ですし、こうすることが浮世絵販売には重要であったということです。

 勘助伝説も、史実の結果なのか、庶民に流布した当時のドラマの影響なのかを区別しないと、ドラマに秘められた真実を見逃してしまうことになります。以後、直江山城の登場する浮世絵を取り上げつつ、直江に仮託された庶民感情を読み解ければ幸いなのですが。さて、どうなりますか。本年も、また、よろしくお願いいたします。

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2007年11月25日 (日)

一光三尊仏

Takadal 大分以前のことになりますが、義母の法事を札幌市で行った際、宗派が真宗高田派であるということを聞いたことがありました。初めて聞いた名でしたから、特に記憶に残りました。そこで、最近、右の三代豊国の浮世絵(三枚続)に出会い、調べてみるとおもしろいことに気付きました。

 真宗高田派の総本山は、現在、三重県の津市にあるそうです。実は、義父の父は三重県の津市出身で、戦前、旧国鉄の職員となり、最終地を北海道で迎え、そのまま、北海道に定住したそうです。つまり、出身地の習俗をそのまま、北海道まで伝えたということになります。

 ところで、津市にあるのに、なぜ高田派というかといえば、もともと、本山が栃木県の二宮町高田にあったので、その山号・高田山に由来しています。右の浮世絵に描かれる立札に、「下野国 高田山」とあるのがそれに当たります。ここでは、元本山と呼んでおきます。

 さて、この元本山は、関東布教の根拠地として浄土真宗の開祖・親鸞によって建立された寺として知られ、その本尊が信州善光寺の本尊である秘仏を模した一光三尊仏なのです。浮世絵には、「信州善光寺如来一躰分身」と書かれています。善光寺に由来する一光三尊仏を本尊とするということで、話は振り出しに戻って、善光寺の地に住む私達家族まで繋がるのです。

 浮世絵の説明として、是非とも加えておかなければならないのは、当作品は、本尊などを他所に持ち出して開帳する、「出開帳」(でかいちょう)を描くものである点です。出開帳は、寺社が建物等の建設・維持管理などのための資金捻出方法で、高田派の場合は、本山と元本山とに別れ、資金能力が落ちてしまったことに対する苦心の策なのだと思われます。出開帳を成功させるためには、「信州善光寺如来一躰分身」は大きな役割を果たしたものと想像されます。

 出開帳は、安政六年「未年三月廿一日より五十日之間」「浅草唯念寺」 で行われたとあり、当時の様子を記録する『武江年表』安政六年の項にも、「参詣多し」とあります。上の作品は、安政五年八月の年月印が押されていますから、半年ほど前からの予告作品ということができます。浮世絵が宣伝広告の機能を果たした例です。

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2007年2月 3日 (土)

節分の豆まき(2)

H66  前回に続き、『北斎画譜』を見てみましょう。こちらは追われる鬼の反対側、「福は内」の方です。なんと恵比寿と大黒の二神が鯛をさかなに盃を交わしているようです。

 赤鬼・青鬼が二匹ということに対し、恵比寿・大黒の二神という対比のようですが、漁業と農業の神が鎮座し、まことに目出度い情景です。通常は台所に祀られていた、この二神は、今日は奥座敷に招かれているようです。

 二神の前に垂らされているしめ縄は結界を張っているのですが、このしめ縄について少し触れてみます。なかに、ウラジロといわれるシダ植物が吊されています。なぜウラジロが吊されているのでしょうか?

 ウラジロの一種にカネコシダと呼ばれるシダ植物があるそうで、またウラジロのことをカネクサともいうそうです。いずれにしろ、鉱石のある地によく生えることからの命名といわれています。つまり、結界の中には、鉱山があるということが推測されるのです。こうしてみると、しめ縄はまさに縄張りであったことが理解できます。

 縄張りをし、原石を火で焙り、小金(こがね)を手に入れ、不純物は外に捨てる、という一連の工程が見えてきます。図中手前の炭火は、暖を取るためのものかもしれませんが、鋳物鍛冶には不可欠の材料です。また、同じく、図中背後に大黒の打ちでの小槌が置かれてありますが、これも鉱山あるいは鍛冶現場の道具のように思われます。

 節分の豆まきというのは、実は鬼退治(伝説)の原型をなしているということがよくわかります。

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2007年2月 2日 (金)

節分の豆まき(1)

H64  左の部分図は、『北斎画譜』の中に描かれている節分の豆まき風景です。袴裃を着けた人に「鬼は外」と言われ、豆をぶつけられていますが、よく見ると鬼は赤鬼と青鬼に描き分けられています。赤と青の色の対比には、陰陽の対立が表現されているのではと思います。

 さて、よく考えてみれば、たかが豆ごときをぶつけられたからといって、鬼はなぜ退散するのでしょうか?たぶん、初めは別の意味があったことが、風俗化され、あるいは様式化され、意味不明の行事になってしまったのではないでしょうか。

 豆は、生ではなく、炒った大豆を使うのが普通ですが、ここのところが肝要な部分です。つまり、固い金性の、すなわち、金属のような豆を炒るのは、金属を鋳って溶かすことの象徴と考えられるのです。災いや戦いは金性に宿るという考え方からすれば、それを火で溶かしてしまえば原因がなくなるのです。したがって、金属を象徴する固い大豆を炒った段階で、すでに鬼退治は済んでいることになります。

 ただし、もう一歩話を進め、このような行為の背景に、金属鋳造の作業工程があるとすれば、クズ(オニ)を外に捨てれば、内に黄金が溜る、すなわち、「福は内」となるわけです。さらに、上の浮世絵を見るとしめ縄が張ってあります。結界の外に追い払われた鬼は、鉱山開発を巡る利権から排除された人々と見ることもできましょう。

 節分の豆まきは、旧年の災いを払い、新年を迎える行事ですが、先住した山の民の古い習俗がその起源なのかもしれなれませんよ。

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2006年12月27日 (水)

浮世絵を読む

Culture1_1  平成18年10月から、長野県カルチャーセンターで、「浮世絵を読む」という講座を開設しています。本日も、年末の押し迫った日にもかかわらず、数名の欠席者だけでほとんどの受講生の方々が参加してくれました。そこで、年末記念写真(?)を撮らせていただきました。一名の方は、魂が吸い取られるということで、撮影をご辞退されましたが、さすが江戸時代の浮世絵を対象にしている講座の受講生だけあって、歴史的辞退理由です。

 前列右から二番目が私、講師先生(!)です。15名の受講者から始まったこの講座が、今後、どのような流れを生み出すかの証を残しておこうと思い、ブロブに掲載させていただきました。浮世絵を通して、伝統的文化の視点を確認し、それを今日に生かそうとの考えで非力ながら行っております。継続は力なりと言い聞かせ、まずは平成18年の講座を無事終えました。

 平成19年も、1月17日から気分一新で行います。この間は、『新春浮世絵名品展』の企画とも重なっておりますが、逆に、展示浮世絵の内容を浮世絵講座で触れることもでき、相乗効果を狙いたいと思います。ただし、旧暦では、まだ11月8日で、年明けまでには大分期間がありますね。気持ちは、旧暦のスローテンポで行く予定です…

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2006年12月15日 (金)

ブログ始めます

 信州での田舎暮らしを始めて二十余年になります。当時は法学研究者(刑事法)であった身が、最近では、江戸の庶民文化浮世絵を語ることの方が断然多くなってきています。通常とは違う経歴からか、「浮世絵分析に関する視点がなかなかおもしろい!」との言葉をよくかけていただきます。
 そんな事情もあって、浮世絵を通して学んだ視点から、日々の生活を省みる文章を積み重ねようとブログを立ち上げさせていただきました。別に、『市民の浮世絵美術館』というホームページを運営していますが、それを補足する思いもあります。どんな話の流れになるかわかりませんが、よろしくお願いいたします。

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