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蛍日記 2-4 蛍マップ1

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 蛍の堰を中心に、蛍(黄色の丸)の分布図を作ってみました。赤いやじるに従って、水は流れています。同じ堰なのに、蛍のいる所といない所がはっきりと別れます。この地区は西(左)から東(右)に扇状地が広がっているので、流れの速い東西方向ではなく、南北方向の堰や堰のクランク(枡)部分に蛍がいることが分かります。この点からすると、南北方向の緩やかな流れなのに、どういう訳か、全くホタルのいない堰がマップの右側上部に1本あるのに気付きます。実は、自宅で飼育しているカワニナは主にこの場所(カワニナの堰)から採取しており、その体験からすると、上流部分はカワニナが棲める程度の水質です。これに対して、下流部分でカワニナを見つけたことがありません。

 蛍の堰の辺りはかつては水田でしたが、現況は未耕作地であるのに対して、カワニナの堰は両側に水田が広がり、堰に流入する水量も多くなく、緩やかな流れは水田からの湧き水が主体なのではないかと推測されます。水田には全く蛍はおらず、蛍の棲める水質環境にないのと同様、水質が水田と等しいカワニナの堰にはやはり蛍は生息していないということになります。ついでに言えば、マップの右側に示される滝沢川の蛍は、水量の多い川の水によって、水田からの農薬・除草剤などがホタルが生息できる程度に希釈されているのではないかと予測できます。

 次回、また別の場所の蛍マップを紹介したいと思いますが、地域全体の蛍あるいはカワニナの分布図を作成すれば、科学的分析をしないでも、水田の水質環境(農薬・除草剤の希釈性・酸素飽和度等)が一目瞭然になるように思われます。ただし、地元の耕作者からは嫌われるだろうなあ…。

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蛍日記 2-3

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 今年の源氏蛍は7月10日頃が最後となったようです。前回のブログで、「蛍の堰」の下流から飛翔してくる蛍を確認した旨を報告しましたが、その先を辿っていくと堰の水は滝沢川に流れ込みます。この地区を流れる堰は、基本的に信濃町から流れてくる滝沢川を取水口として、地区の田畑の中を流れ、再び下流で滝沢川にその水を返します。つまり、堰を遡る蛍の群は、堰の水が流れ落ちる滝沢川から来ているのではないかと当たりをつけ、完全に日の落ちた頃、川に出かけてみました。

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 いました!いました!川の蘆の間で多くの蛍が光を放ち、また蘆の上を蛍の群れが飛び回っています。堰の水の出口辺りにも蛍の一団がいて、彼らが堰を遡って飛翔し、「蛍の堰」までやって来ているのだと確認できます(2番目の写真は途中の土手部分)。蛍が生息範囲を広げていく仕組みが少し分かったような気がします。本来ならば、蛍は滝沢川に沿って上流に向かえばよいのですが、ここ数年、重機を持ち込んで川床の浚渫がなされ、当該地区を流れるほとんで全ての川床が綺麗に掃除されてしまい、蛍やカワニナの生息できる環境ではないので、堰ルートが利用されているのではないかと想像します。前々から、この場所の下流にある西黒川地区は蛍の生息場所として知られており、ここに蛍がいてもおかしくないと考えていたのですが、今年、その推論が間違っていなかったことが証明されました。

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 昼間の写真ですが、昨年は途切れ途切れだった蘆の島が全て繋がって一帯に繁茂しています。蛍が乱舞する滝沢川の、まだ浚渫されていないこの一画は、大切に保護されなければならないと強く感じます。それと同時に、河川改修や浚渫は、河川全体を一気に全て施工し、水生生物の生活環境を激変させるのではなく、一部従来の環境を残しつつ、順番に実行していくことが重要であると思います。もしこの場所を浚渫するならば、すでに浚渫した箇所の環境がある程度従来に復した後に行われるべきです。なぜなら、蛍等は生息地を変えながら生存できるからです。なお、擁壁の高さが2m位あるので、夜間の蛍観察にはリスクがあること、念のため付け加えておきます。

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蛍日記 2-2

 「蛍の堰」にいる蛍は川や堰などで繁殖する源氏蛍です。飯綱町の別の地域には、田圃で光る平家蛍もいるという話を聞きますが、私はまだ見たことがありません。 当該地区(古町)には無農薬の田圃がないので、仕方のないことです。

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 今年の観察では、蛍の堰で生まれ育った蛍以外に、堰の下流方向から上流方向に昇って来て群れ飛ぶ蛍を多数確認することができました。もちろん、一直線に昇るというわけではなく、複数の蛍が群を作り、行きつ戻りつしながら、断続的にです。そして、蛍の堰には直角に曲がる部分があり、また胡桃など木々が生えていることもあって、そこで一団の蛍の群ができるあがるという訳です。一部の蛍はさらに堰に添って進んで行っているようです。その先にはもう1つ堰の直角コーナーがあるので、そこにも蛍の一団を見ることができます。 こちらには木々がないので、堰周りの草に止まっており、近接撮影には適しています。


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 最初の1枚目の写真は、堰の下流から上流方向に視点を採ったものです。2枚目は、さらに上流のクランク近くを下流方向から撮影したものです。3枚目は、まさにクランク部分で、堰の水は左下から中央を経て右下に流れています。言うまでもなく、写真の露出をかなり上げているので、実際の人の目には暗い中に蛍の光が見えているだけです。地元なので地形が分かっており畦を歩くことができますが、 そうでなければやや距離を置いて道から眺めるのがやっとでしょうね。

 私よりずっと若い諸岡氏には、「写真、よろしくね!」の一言で撮影をお願いしてしまったのですが、本当に頼りになり、また感謝しています。

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蛍日記 2-1

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 本年は、6月19日に蛍を初見しました。昨年、餌となるカワニナを2,000個以上放流した、堰の土手に生える草の茂みに4~5匹点滅しています。この日より、約10~14日後に群れ飛ぶ蛍を見ることができるはずです。昨年は蛍の時期直前に大雨が何日も続き、それほど多くの蛍を観賞できなかったのですが、さあ今年はどうなるか、後は天候次第ですね。

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 初見から4日後の午後8時頃、本日は20匹程の蛍が点滅し、また2~3匹程集まる群れが複数あって、堰の上を飛び回っています。昨年は胡桃の大木辺りに集中していたのですが、今年は堰全体に点在している様子です。生息範囲がいくらか拡大したのかなと思わせる現象です。写真では、手前の平らな草の部分(田圃に渡る道)から奥の木々が見える辺りの範囲です。たった20匹程度の蛍なのですが、「堰に蛍が帰って来た」と言える数です。早速、現地からLineを使って地区の住民にお知らせをした次第です。

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 ところが翌日からの6月24日、25日、26日にかけて、堰の下流から上流に向かって蛍が群れ昇って来るのが観察されました。その総数は100に近い数十匹ではないでしょうか。例年観察している堰(「蛍の堰」と仮称します) の蛍を圧倒する数です。蛍の堰の部分がちょうどクランク(枡形)状になっているので、戦国時代の城攻めの兵のように、一旦、「蛍の堰」の部分に滞留しているのではないかと推測します。なんと「蛍の堰」が蛍の中継地となっているようなのです。地区の中で、時々、1匹2匹と孤立した蛍を見かけることがあるのは、さらに、ここから清流の生息地を探訪する一人旅の蛍たちなのだと想像できます。

 「蛍の堰」は、生息地であるばかりでなく、じつは中継地であったのではと思わせる事実です。蛍が堰や川を遡るのは、清流でなければ生息できない蛍の生存戦略であり、その目撃からは蛍は意外に逞しい虫なのだと感じられました。それにしても、昨年はこの蛍の大移動(トランジット蛍)を目にしていなかったのに、今年は何が起こったのでしょうか。この点については、思い当たる節があるので、今回の報告はここまでにして、次回以降、さらなる実地調査とあわせてお知らせしたいと思います。

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