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3-36.羅漢寺の不二

Fugaku3_0251

 本所五ツ目の渡し場近くの天恩山五百羅漢寺の三匝堂(さんそうどう)を描いた先行作品としては、すでに三十六景「五百らかん寺さゞゐどう」があります。これに対して、本作品はその形から栄螺(さざえ)堂とも呼ばれていた高楼の堂の九輪部分に焦点を当てて描いたものです。背景には、深川の田園風景と立ち並ぶ木場の材木群が描かれています。

 本作品の読み解きはそれ程難しくはありません。前面に描かれる九輪部分が明らかに富士に相似する三角形をなしていて、近景に富士世界を導き出しているからです。それ故、空を舞う鶴と合わせると富士に鶴という吉相図になります。もちろん、遠景の富士についても同じです。「五百」羅漢寺、「千年」長寿の鶴、「不死」の富士という縁起のよい3つを並べるという趣向で、百景「福録壽」と同系列の作品です。なお、九輪の右側を飛翔する鶴を富士に相似する三角形と見れば、遠景の富士(神霊)が五百羅漢寺に向かって飛んでくるという面白いイメージの作品になりますが、後に続く1群の鶴が富士の方向から飛んできていないので、考えすぎかもしれませんが。

 三十六景「五百らかん寺さゞゐどう」では近景の富士を構図中に見つけることができないという未完成があったのに対して、本作品ではその部分を完全に修正しています。ただし、実際は堂の屋根には九輪は付いておらず、この部分は北斎の創意であるという指摘があります(鈴木・前掲書p249参照)。

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