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3-38.さい穴の不二

Fugaku3_0261

 「さい穴」とは、木の節穴という意味です。本作品は、その節穴に差し込んだ光が幕代わりの障子に富士の像を結ぶ、ピンホール(カメラ)現象を描いたものです。客が富士に驚くという趣向においては、百景2編「掛物の發端」と共通しますが、本作品は光学的視点を紹介する趣旨が優越しているようです。家の中に逆さ富士を見るのですから、これ程の近しい富士というものはないでしょう。なお、同2編「窻中の不二」には、望遠鏡を応用した光学的視点が背景にあると想像しています。

 ちなみに、北斎がこのピンホール現象の知見を得た過程には、北斎が一時寄宿していた曲亭馬琴の存在が指摘されています(鈴木・前掲書p250~p251)。馬琴の『羇旅(きりょ)漫録』(享和2年・1802)の「五綵(ごしき)の山水」に、岡崎の木綿問屋納戸で縁側の節穴からの光が美濃紙に景色を写す記事があり、北斎はそれを富士に換えて描いたと推測されます。自然の節穴からの採光なので、富士が二重写しになっているところなどが北斎の工夫でしょうか。本作品中、箒を持つ男は草鞋を履いているので、料亭などではなく、まさにどこかの納戸辺りが想定されているのだと思われます。

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