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55 美濃国 「河渡」

「五十五 岐阻(キソ)路ノ驛(ヱキ) 河渡(カウト) 長柄(ナガヱ)川鵜飼舩(ウカイフネ)」  英泉画 保永堂


Kisokaido56 加納宿を発って西に進むと、長良川を渡って河渡宿に到着します。『木曽路名所図会』(巻之2)は、その「長柄川(ながらがは)」について、「岐阜の北町端(はづ)れ因幡山の麓を流る。水源飛騨國より出て下流は墨俣川なり。中夏の頃より秋まで鰷(あゆ)多し」とあり、また、「鵜飼舩は長柄村より尾州侯の命令を受て暮かたより河上に漕のぼり闇の夜に松明を照らし舩のめぐりにさし出し鵜飼の綱をさばき鵜をつかふけしき又めづらし。一人して鵜を十二三羽あつかひ鰷をとらす事いと興あり」と記します。そのうえで、後掲図版「長柄川鵜飼舩」を掲載しています。当作品が、同名所図会の図版と解説を種本にしていることは明らかです。同図版では、3人1組で忙しく鵜飼漁を行っているのに、英泉作品では2人1組で、煙管を吹かしながらというのは、絵師の観光的関心の表れかもしれませんが、構想図(絵空事)の特徴とも言えましょう。

 美濃路は、概略的には、東部の宿場(落合から鵜沼の9宿・尾張藩)が丘陵・台地を綴っていたのに対して、西部の宿場(加納から今須の7宿)は木曽川水系の低湿地帯を進み、集落の周りに堤を築いた、いわゆる輪中地域の北側を抜けていきます。河渡辺りの風光の特徴は、長良川とその源流に当たる稲葉山となります(前掲名所図会にも「河渡川」と「岐阜稲葉社」の2図が掲載されています)。前掲名所図会の図版が、長良川の鵜飼とスヤリ霞の背後に稲葉山らしき岐阜の山々を描いたのも頷けます。英泉は、当図版を元に、しかし、スヤリ霞を消して、宿場近郊の河渡の渡しでの鵜飼の様子を描いたと考えられます。背後に描かれる山は、岐阜城のあった稲葉山(金華山)を想定しているはずですが、実景的には、さらに上流でなければ見えない景色です。ただし、当木曽海道シリーズにおける英泉作品では、前景と後景の視点の不一致は常套的なことです。

 芭蕉の句、「おもしろうてやがてかなしき鵜飼かな」の情緒が画題です。


*注1:『木曽路名所図会』巻之2(長柄川鵜飼舩)

Nagaegawa

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