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18 上野国 「坂本」

「十八 木曽海道六拾九次之内 坂本」 無款(英泉画) 錦樹堂


Kisokaido18 『木曽路名所図会』(巻之4)には、「百合若大臣 射貫巌 足跟石」、「日本武尊は碓日嶺より辰巳の方を見やり橘姫をこひて吾嬬吾嬬と宣ふ。…」の2図版が掲載されています。しかしながら、旅人にとってより重要なのは、横川の関所と図版「碓日嶺 熊野社」に描かれる難所・碓氷峠です。同図版には、坂本宿から「はね石坂」(刎石山・はねいしやま)を登り、上野と信濃の国境をなす熊野神社へ向かう経路が細かく描かれています。一方、英泉はその俯瞰構図の中から、坂本の宿場と登るべき刎石山に焦点を絞っています。後掲『岐蘓路安見絵図』(坂本)は、宿場に関しては、「宿の中を用水流る」、刎石山に関しては、「此所石多してさがし。此所少しの間箱根より甚難所也」と注意書きを付しています。

 当作品の構成は、宿場の中央を流れる用水を挟んで左右に並ぶ旅籠などの建物や道を行き交う人々の様子を俯瞰して描いています。『宿村大概帳』によれば、本陣2、脇本陣2、旅籠屋40とあり、宿場の手前にあった横川の関所と難路の碓氷峠を控えて相当盛況な宿場でした。宿場の左方向が刎石山の坂に続きます。当作品については、「実際の刎石山はこの絵と違って、街道の真正面に見えた」(『旅景色』p28)と解説されることが多いのですが、英泉の制作方法を考えると、街道の正面方向に見えた、攻略すべき刎石山をまず描き、その下に宿場を挿絵的に描き入れたと理解した方がよいかもしれません。広重が保永堂版東海道「箱根」で作品中央に大きな山(峠)を描いて厳しい峠越えを表現したのに対して、英泉はその役割を実景を離れて刎石山に求めたと考えられます。こうして、上野国は、広重の新町に始まり、英泉の坂本で終わることになります。


*注1:『岐蘓路安見絵図』(坂本)

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