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29 信濃塩尻峠

Fuji_29 渓斎英泉・歌川広重『木曾街道六拾九次』において、英泉「塩尻嶺 諏訪湖ノ湖水眺望」では、諏訪湖と塩尻峠は1図に納まっており、その視点は江戸方向に歩む旅人のものでした。これに対して、広重は作品を2図に分けて、諏訪湖からの眺望とは別に、本作品では、峠の坂を下り京(洗馬・本山)方向に進む旅人の背後に見返すような富士の姿を描いています。広重が2つに分けたのは、諏訪湖と塩尻峠との2つの図版を載せる『木曽路名所図会』(巻之三、四)と同じ思考に拠ったのかもしれません。いずれにしろ、木曽街道(中山道)から見える最後の富士を描き留めておこうという発想です。


 本作品では、くの字に曲がった街道の視線の先に富士が描かれ、紅の一文字ぼかしは夕暮れ時を表現し、空には雁の帰巣姿があって、旅人が宿へ急ぐ姿も重ねられています。富士の右手に見える山々は、今日、南アルプスと呼ばれるものです。後掲「30 甲斐御坂越」に比べると絵師の視点が高く、街道は谷底にあり、また旅人や富士を見下ろすような感覚で描写されています。

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