« 26 駿遠大井川 | トップページ | 28 信州諏訪之湖 »

27 伊勢二見か浦

Fuji_27 二見ヶ浦は、伊勢湾に注ぐ五十鈴川の河口に形成された三角州状の地帯で、伊勢神宮参拝の禊場でもあります。そこには、「立石」と「根尻岩」という二つの岩があって、「夫婦岩」と呼ばれています。立石崎の夫婦岩を結ぶ大注連縄は、沖にある猿田彦ゆかりの興玉神石(おきたましんせき)の鳥居とされていて、古代の磐座(いわくら)信仰に基づいています。夏至には夫婦岩の間から日が昇りますが、とくに富士の背後より昇る日の出が有名です。本作品は、伊勢と富士の両信仰が重なる、大変おめでたい神域を主題にしています。


 作品の制作過程は、『伊勢参宮名所図会』(巻の五)の図版「二見浦」が参照されていると推測されます。ただし、『冨士三十六景』の本作品では、竪絵のためか、「立石」(男岩)と「根尻岩」(女岩)とが重なり合っていて、伊勢信仰的意味合いがやや犠牲にされています。反対に、富士の背後から朝日が上る直前の情景に主眼が置かれ、その富士がまた本作品の遠近法上の消失点になるよう、海岸の岩などの配列にも気が使われています。


 なお、山梨県立博物館『北斎と広重』の図録133頁は、左隅の岩を「根尻岩」(女岩)と見て、岩の位置が実際とは「反転してしまっている」と解説していますが、これは誤りです。さらに、実際の「根尻岩」(女岩)と本作品、上記名所図会、そして国芳『東海道五十三對』「掛川」などの作品に描かれる岩との形が違うのは、岩が明治末の台風で折れ、それを修復した経緯があるからです。


 本作品において、東海道を西に進みながら富士見の景勝地を描いてきた部分は終了となり、以後は、木曽街道、甲州街道、房総からそれぞれ富士見の名所を選定していく趣向になります。

|

« 26 駿遠大井川 | トップページ | 28 信州諏訪之湖 »

広重の冨士三十六景」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197953/62303369

この記事へのトラックバック一覧です: 27 伊勢二見か浦:

« 26 駿遠大井川 | トップページ | 28 信州諏訪之湖 »