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26 駿遠大井川

Fuji_26 駿河国と遠江国との国境を流れる大井川からの富士の眺めです。宿場の名を挙げれば、嶋田と金谷ということになります。富士が眺望できるのは、金谷宿側からです。『東海道名所図会』(巻の四)にある図版「大井川」、「大井川続き図」をベースに、保永堂版「嶋田 大井川駿岸」と「金谷 大井川遠岸」とは描かれたと考えられます。そして、その川渡しの様子を拡大した作品には、保永堂版「府中 安部川」があります。その後、同種の構図を持つ作品がいくつも生み出されています(『東海道五十三對』「金谷」など参照)。本作品もその1つとなります。川渡しの日常景の中に富士を置く趣向です。


 本作品では、近景右側には、駕籠をそのまま平輦台で運ぶ様子が描かれ、左側奥には、2人の旅の女性を直接輦台に載せる描写があります。女性達はくつろいでいるように見えます。人足の肩に直接担がれる武家、女性の外に飛脚などもおり、さらに、嶋田宿側の岸には大名行列が川渡りの準備をしている様子までも見えています。さらにその背後の木々の生える堤は、幕府によって建設された水除堤です。川渡りの旅人や川越人足の連なるその視線の先・消失点に富士を置く、遠近法を応用した構図です。また、近景の駕籠の三角形と遠景の富士とを相似形として置く、北斎由来の構図を応用していますが、比べれば日常景の範囲内に納まっています。


Hokusai45 北斎『冨嶽三十六景』「東海道金谷ノ不二」も、大井川の川越人足による徒歩渡しの様を描くものです。一見すると、旅人の丸い笠の群れと三角の富士との対比の妙が画題かと思われてしまうのですが、波立つ大井川に巨大な富士に相似する三角形が隠されていることに気付けば、近景に富士世界を描く富士信仰に基づく作品であることが判ります。対岸の桜は、富士の祭神・木花咲耶姫の象徴であり、かの女神は水神であることを忘れてはなりません。日常景を目指す広重と富士信仰世界を描こうとする北斎の、大きな相違です。

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