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16 武蔵本牧のはな

Fuji_16 本牧の「はな」とは、本牧岬の端もしくは突端という意味で、『江戸名所図会』(2-p283)によれば、本牧十二天宮が祀られています。神奈川宿の台(の景)から見える絶壁が、この社の裏手にある巨巌に当たります。『江戸名所図会』の図版「本牧吾妻権現宮」(2-p290~p292)の詞書解説には、「本牧の地は、神奈川駅の南に続きて海上に鋭(さ)し出でたる一方の景地にして、勝区を探る人をりをり道をここに取ると見えたり」とあります。


 本作品の手前には、筵(むしろ)の帆を張った船があって、魚などを運んでいるのでしょう。その背後に見える海岸線の桃色は、磯子浜の桜(あるいは梅)の花と思われます。春の桜(梅)、丹沢山地(大山)、そしてと富士という情景です。この構図の基本となった作品は、すでに、『不二三十六景』「武蔵本牧海上」に見られます。ただし、竪絵と横絵の違いがあって、本作品では崖の上部がトリミングされていて、崖の高さが強調され、また低い視点からの富士眺望を味わおうとの意図が感じられます。北斎ならば、船の帆を張る綱の三角形と富士の三角形の相似をもっと強調したのではと思われます。広重は、繰り返しになりますが、本牧の日常景の中に富士を置くことに主眼があります。


 ちなみに、『富士見百図』の最初の絵は「武蔵本牧」を描いた作品になっています。シリーズ幕開けに相応しい様式性のある風景と感じられます。

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