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14 武蔵越かや在

Fuji_14 越谷からの富士風景は、『江戸名所図会』、広重の『絵本江戸土産』、『不二三十六景』、そして江戸百にも見当たらず、初出と考えられます。もちろん、北斎の『冨嶽三十六景』にもありません。二代広重『絵本江戸土産』第9編に「越谷鷲大明神」を見る程度です。では、本作品制作はかなり特異なことなのかと言うと、必ずしもそうではありません。千住から日光街道沿いと目黒川沿いの両地域は、富士講が盛んなところとして知られていて、数多くの富士塚が造られています。したがって、日光街道(奥州街道)の3番目の宿駅で、草加宿と粕壁宿との間にある越谷からの富士風景は、北方江戸郊外に拡大した富士講信者を取り込むという点では、営業的にも十分制作に値します。もちろん、北斎『冨嶽三十六景』が千住地域から3作品(「武州千住」「隅田川関屋の里」「従千住花街眺望ノ不二」)を描いているので、それを避けて、千住に次ぐ大きな宿場越谷から選定したことも動機としてあるでしょう。


 本作品に咲くのは、越谷地方の名産であった、桃の花と考えられます。今日の桃とは違って果実はかなり小さく、甘味も少ない種類です。桃の木の下や背後の畑地には、春らしく、菜の花も咲いているようです。画面を横切る川は、宿場の中央を流れる元荒川で、渡し船を待つ旅人が小さく描かれています。越谷宿は、北に農村地域大沢町、南に商業地越谷町とに分かれますが、本作品は、大沢町付近から元荒川越しに富士および丹沢山地を望んだものと思われます。作品の感じは、江戸百「蒲田の梅園」を彷彿とさせます。

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