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「日坂」 歌川国芳 伊場屋仙三郎

26_new 「昔 此駅に何某の浪人妻妊娠しける。夫は忠義の為に吾妻(あづま)へ赴くに 其帰を待居たりし。ある夜 佐夜の中山沓掛松原にて盗賊出て恋慕し 絶ざるにより斬殺し行衛しれす。此女日比(ひごろ)念ずる観世音僧と現じ 亡婦の懐なる赤子に飴をあたへ養育なさしむ。夫此事をしらず。夢見あしきゆへ 急ぎ我家へ帰る道にて夜啼石のはなしを聞て なほなほ奇異の思ひをなし 夜にかヽり沓掛松原の石の辺(ほと)りを通りしに 妻の亡霊あらハれ くハしき事を物語り懐の赤子を渡し 夫(それ)より魂魄付まとひて 終に敵を討(うた)しけり。」

 本作品の詞書きは、『東海道名所図会 巻之四』「遠江 日坂」の「夜泣石」、「夜哭松」、「妊婦塚」(はらはみおんなづか)、「子育観音」の各項をベースに書かれています。一種の観音霊験記と考えられます。国芳の作品は、母の情愛表現ではなく、恨み残した怪奇物語風に描かれていて、妖怪や異界物を得意とする彼の特徴がよく出ています。怨霊信仰を思えば、詞書きにあるように「終に敵を討しけり。」となって、初めて怨念が消える結末を迎えます。

*保永堂版東海道「日坂 佐夜ノ中山」は、『東海道名所図会』の図版「佐夜中山」を参照したものと思われます。ちなみに、同図会は、「佐夜」は「さよ」ではなく、意味を考えて「さや」と呼ぶべきと提唱しています。なぜばら、この山は、「遠江国佐野郡(さやごおり)」にあるからです。

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