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「藤澤」 歌川国芳 伊勢屋市兵衛

07_new「小栗小次郎ハ鎌倉権現堂にて強盗横山の家にとまり 毒酒ニてすてに殺さるへきを 照手が貞操にて其場を忍びいで鬼かげといふ荒馬に乗つて藤沢寺へ駈入 急難遁(のか)れける。されども其毒気にあたり 終にかぎやみとなつて熊野本宮にいたる。照手 百千の苦をしのびて車につきそい これを引行。熊野権現の利生によつて本復なし かたき横山をうちとり照手をともなひ本國へかへり家をおこし 美名をかヾやかす。」


 『東海道名所図会 巻之六』「相模 藤澤」は、「藤澤山無量光院清浄光寺」(とうたくさんむりょうこういんしょうじょうこじ)の記述に始まります。すなわち、藤沢は、時宗の本山・藤沢寺(遊行寺)の門前町と言うことができ、詞書きも、その藤沢寺(藤沢道場)あるいは小栗堂(長生院)にちなんで、小栗判官と照手姫伝説を紹介しています。詞書きの内容は、同図会の「小栗伝」と図版内の説明文に主に従い、それに長生院に伝わる伝説や人形浄瑠璃・歌舞伎などでよく知られた内容を加えたと考えられます。いずれにせよ、藤沢寺や熊野権現の利生譚から派生した物語です。

 国芳の絵は、毒酒で殺された小栗判官が閻魔大王によって現世に戻され、照手(照天)姫の献身と熊野の湯之峰温泉の薬効によって本懐し、足が萎えて歩けなくなった小栗判官が力強く復活した場面を描いています。小栗の横にある車は、業病で歩けなくなった小栗判官を乗せて、熊野まで照手姫が引いたいざり車(車椅子)です。

 なお、詞書きにある「かぎやみ」は、「がきやみ」、すなわち「餓鬼病」あるいは「餓鬼阿弥」の誤植かと思われます。業病一般、あるいは餓鬼のようにやせおとろえ、耳鼻も欠け落ちて 生気のない者を指します。

*保永堂版東海道「藤澤」は副題「遊行寺」となっていて、門前町藤沢を描く趣向です.。藤沢が東海道と江の島や大山を結ぶ分岐点になっていることもあって、江の島神社の鳥居に、江の島詣でや大山詣での人々が描かれています。

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