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「吉田」 歌川三代豊国 伊勢屋市兵衛

35_new 「梅屋
うちそよき 霰(あられ)の鹿子によろこひを まねくよし田の 二階穂の稲」


 尾張藩出入りの秣(まぐさ)の大店の主でもある狂歌師・梅屋鶴寿の歌からも判るように、「吉田」の宿場は、二階の茶屋から飯盛女が手を振り誘う華やいだ雰囲気があったようです。そして、これは当時の旅人には共通の認識であったと思われ、その他に、「吉田通れば二階から招く しかも鹿の子振袖が」という俗謡などが有名です。

 というわけで、三代豊国は、二階から宿場を歩く編笠の武士に声を掛ける女性を描いています。その武士が名古屋山三のような美男の若衆風に描かれているのは、千姫の「吉田御殿の御乱行」噺を彷彿とさせます。すなわち、夜ごとに道行く人に声をかけては御殿に誘い込み、享楽の果てに毒殺したという話で、先の俗謡「吉田通れば…」もその様を表現したものとの俗説もあります。いずれにしろ、この作品には、関連する芝居を想像させようとの魂胆が隠されているように思われます。

 背景には、『東海道名所図会 巻之三』の「吉田 豊川」の図版にある、「豊川橋」が描かれています。広重の保永堂版東海道「吉田 豊川橋」も同図版を参照していると考えられます。

*保永堂版東海道「吉田」については、上に述べたとおりです。櫓に登る職人の姿を描く広重作品と二階から手招きする美人を描く三代豊国作品とを比べると、広重作品の諧謔がどこにあったのかが明確になるのではないでしょうか。

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