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「藤枝」 歌川国芳 伊場屋仙三郎

23_new 「熊谷(くまがへ)次郎直実仏門に入て上洛し 黒谷の法然上人の弟子となり 蓮生法師と改め故郷へかへる道 藤枝の駅に宿(しゅく)せし家にて鳥目壹〆文(てふもくいつくわんもん)を上洛まで借用して其質物(しちもつ)に十念を授け 故郷へ帰り 其後(そのヽち) 又上洛の砌(みぎり)壹〆文を返し 預け置し十念を 今又我に給ハれといふに いと安き事 と十念を返す。不思議なるハ 初め十念を受し時 池に蓮華十茎(とくき)咲出たるが 今返す時念佛一遍に一莖づヽ消失たり。此奇特を感じ 責て一ぺんハ我に残し給ハれと願へバ 念佛一遍を与へ上洛しける。夫より此家を寺となし 蓮生寺と号するなり。」


 詞書きは、『東海道名所図会 巻之四』「駿河 藤枝」の「蓮生寺」からの引用です。『平家物語』にある、一の谷の合戦で無官太夫平敦盛を手に掛け、無常を感じ、仏門に入ったという伝説を持つ熊谷次郎直実が蓮生法師となった後の話(蓮生譚)です。『一谷嫩軍記』(いちのたにふたばぐんき)については、『カブキ101物語』24頁参照。

 『東海道名所図会』には、親族久下直方と家督争いをして、鎌倉を逐電し、伊豆の走湯山に登り仏門に入って後、上洛して法然上人の弟子になって、出家し、蓮生法師と改めたとあります。国芳の絵の方は、蓮池に蓮の花が咲くのが見えるので、鳥目(路銀)を借りて故郷へ帰る際の情景です。ちなみに、十念とは、「南無阿弥陀仏」を10回称える作法のひとつで、それによって、阿弥陀仏の極楽浄土に往生できると説かれています。本作品は、藤枝の蓮生寺のパブ記事のように感じられます。

*保永堂版東海道「藤枝」は「人馬継立」で、特段、「藤枝」を特徴づける内容にはなっていません。「蓮生寺」は別として、同図会に、「藤枝」に関する紹介がほとんどないことと関連がありそうです。

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