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「大津」 歌川広重(戯筆) 伊場屋仙三郎(異版)

54_new 「大津繪の 筆のはしめは 何佛」


 版元は、同じ伊場仙であるにも係わらず、広重が単独で再び筆を執った作品です。東海道シリーズでは一番人気の絵師広重を使って、別意に制作販売しようという計画なのか、あるいは何かの調整ミスをこの作品で補ったのか、その理由は不明です。前作品と同じく、松尾芭蕉の句は、『東海道名所図会 巻之一』から転載されたものです。

 本作品も『傾城反魂香』に取材していますが、上部の団扇の中にいる又平が描いた大津絵の主人公達が、絵から抜け出て踊り出す場面を画題としている点で前作品と趣向に違いがあります。穿った見方をすれば、国芳の作品に、『浮世又平名画奇特』という大ヒットした同じ構想の二枚続があります。これは、幕政批判(鷹匠の衣装のかんという字が癇公方13代将軍家定、藤娘は大奥の藤の枝)の嫌疑ゆえに版行中止となった曰わく付きのものであったということを考えると、広重ならばともかく、国芳には描けない事情があったとも考えられます。広重作品でも、鷹匠が謡をし、藤娘が踊っているというのは意味深ですが。右上にあるのは、大津絵「釣鐘と提灯」の釣鐘で、そこに藤娘を加えると、「娘道成寺」の清姫にも見えてきます。

*「大津」と言えば、やはり大津絵というのが当時の庶民感情でしょうし、浮世絵師にとっては浮世又平の伝説です。この点からすると、保永堂版東海道「大津」が「走井茶店」を画題としていたことには、前回触れたように、そうできなかった理由があったと考えるべきでしょう。

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