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「袋井」 歌川三代豊国 伊勢屋市兵衛

28_new 「桜か池の由来

ある夜法然上人の庵へ 女性来りて我ハ艮嶽(こんがく)の源皇阿闍梨より龍善三會の暁(さとり)をまたんため 桜か池ニ入宮して今ハ龍身となれり。然るニ忽身の鱗の合ニ 数万の虫わきて 日に三度 夜に二度身を苦(くる)むる事堪がたし。あハれ桜か池ニ来て 此苦ミをたすけてたへと涙を落して頼ける。上人夢覚て桜か池ニ至り給へハ 水中より化龍(けりゅう)顕れ 上人と答和す。上人龍ニ向給ひて称名念仏し給へハ ふしぎや忽身の鱗落てなめらかになり うれしけに永くみろくの世をまたんとて 又水中にいりしとなり。」


 枠内に桜と池の波が意匠された、この「桜か池の由来」の詞書きは、『東海道名所図会 巻之三』の「濱松」の項に記される話です。この後、「見附」「袋井」と続き、同図会巻之三は終わります。「袋井」に画題となるべき事項がなかったのか、ここにおいて紹介されています。

 『東海道名所図会』によれば、「源皇阿闍梨」の話として、「遠州 桜ガ池」という図版付きで掲載されています。ところが、三代豊国の作品では、「女性来りて」とあり、龍女伝説として再構成されています。『東海道五十三對』の「草津」の龍女とかなり共通する描写で、これもやはり、美人画を隠しての策と考えるべきでしょう。本来は、法然上人とその師・源皇阿闍梨との親交・報恩がテーマですが、三代豊国の作品では、一見すると道成寺や夜叉ケ池を彷彿とさせます。着物の三角の鱗模様は、龍、蛇、鬼を象徴するものです。三代豊国らしい、歌舞伎仕立ての作品とも考えられます。

*保永堂版東海道「袋井」は「出茶屋ノ圖」で、あまり地域柄と結び付く作品ではありません。『東海道名所図会』に適当な題材がないことと係わっているのかもしれません。

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