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「蒲原」 歌川国芳 遠州屋又兵衛

16_new 「蒲原の駅 六本松の故事

むかし矢矧の浄瑠璃姫 判官殿を恋慕ふてここまて到り疲れて終(つい)に死す。里人憐ミて葬り 塚の即に松を六本植置たり。後 小野於通といへる風流の妓女此姫の生涯の事を書つらね十二段とし 薩摩といへる傀儡師に教えて節を付語せける。是浄るりの中祖也。」


*傀儡師(くぐつ):人形を使って諸国を回った漂泊芸人。特に江戸時代、首に人形の箱を掛け、その上で人形を操った門付け芸人を言います。傀儡(くぐつ)回し。人形つかい。

 詞書きは、『東海道名所図会 巻之四』「駿河 蒲原」からの引用です。「浄瑠璃姫」については、「岡崎」に続いて二度目の登場です。前回では「浄瑠璃姫」に焦点がありましたが、ここでは、三味線の語り形式を整えた「小野於通」および江戸前期の浄瑠璃太夫の薩摩(浄雲)に視点を移しています。なお、同図会には、「於通は真田氏にて 豊太閤の御前へも出てヽ舞い諷いし」とあります。

 したがって、国芳の絵は、三味線を背にし、『浄瑠璃十二段草子』を書き連ねる「小野於通」と見られる美人を描き、窓越しに富士を配しました。前宿「由井」の美人と同じく富士と対比する構成と考えられます。

*保永堂版東海道「蒲原 夜之雪」は、奥州に旅立った義経を追って、「蒲原」で亡くなった浄瑠璃姫の思いを絵にしたものと考えられます。雪景色は、思いを残した浄瑠璃姫の死と北国奥州とを掛けたところから選ばれた表現で、実景ではありません。『東海道名所図会』の図版ではなく、「六本松の故事」の記事が作品の創作に影響を与えた代表的事例です。画中の人物が互いに背を向けて離ればなれになっていく状況には、旅の本質に対する広重の考え方が表れていて、とても感傷的な気分になります。なお、国貞の美人東海道は、広重の雪の蒲原図に牛に乗る美人を加える趣向で、雪の峠越えのイメージを出しています。通例、牛に乗る美人は天神見立ての場合が多いのですが、ここでは、浄瑠璃姫の旅姿と見たいところです。

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