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「府中」 歌川広重 伊場屋久兵衛

20_new 「安部郡に流るゆゑにあべ川と唱ふ。水源(ミなもと)は甲斐の白根が嶽より落る。急流にして大井川に双ぶ大河也。東岸に みろく茶屋とて餅をあきなふ。あへ川餅の名 是より起る」

「名産安部茶は 府中の北 足久保より出る。関東茶園の第一にして 多く世に用る。上方宇治 信楽にるゐす。
駿河路や 花橘も 茶の匂い はせを」


 版元伊場屋久兵衛の団扇型の枠に書かれる詞書きは、『東海道名所図会 巻之四』「駿河 丸子」の一番最後「安部川」の記述を基にしたものです。また、そこに描かれる風景は、広重の保永堂版東海道の「府中 安倍川」を写したものでしょう。

 下部に書かれる詞書きは、一部表現を変えてはありますが、『東海道名所図会』「駿河 駿府」の「名産阿陪茶」からの引用です。芭蕉の俳句も同様です。これに、広重が、美人二人の茶摘み風景を加えています。振り袖姿の茶摘みも不自然ですが、働く女性像を騙っての美人画表現と考えた方が良さそうです。茶葉の緑色に浮かぶ、絞りの紅色模様の手拭いが新鮮に映ります。上空を飛ぶのは時鳥(ほととぎす)で、茶摘みの季節、夏に合わせたのでしょう。

*保永堂版東海道「府中」は「安倍川」で、川越人足による徒行渡しの情景です。『東海道名所図会』「安部川」の「この河大井川に及びて 歩渡りの大河なり」を受けての画題選択です。同図会の図版は、相撲取りを主題にしていて、これは広重が「奥津(興津)」で使用しています。

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