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「岡部」 歌川国芳 伊場屋久兵衛

22_new 「蔦の細道神社平の上(かミ)の方(かた)に 猫石といふあり。古松六七株の陰に 猫の臥たる形に似たる巨巌あり。其昔 此所に一ツ家ありて 年ふる山猫老女に化(け)し多くの人に害をなし 人民を悩せしに 天命逃れず終に死して其霊石と化す と世俗にこれを言つたへけれども 其証詳かならず。」


 『東海道名所図会 巻之四』の「駿河 岡部」では、「宇津山」「蔦細道」に多くの頁が割かれ、また図版も掲載されています。その中に、上記の「猫石」に関する記述がありますが、「年ふる山猫老女に化し云々」は、同書にはない内容です。国芳の絵の方を見ると、老婆に変じた猫が娘を襲っている様を描写し、このことから推測すると、文政10(1827)年に上演された、鶴屋南北(四世)原作の『獨道中五十三驛』から、「岡崎の化け猫」を題材としていることが判ります。

 『獨道中五十三驛』は、江戸河原崎座で上演された夏狂言です。尾上菊五郎が様々な役に扮してほとんどの場面に出てくることから、「獨道中」と名題を付けたのではないかと言われています。また、東海道五十三次を舞台面に応用するという趣向としては、この作が初めてでした。その「岡崎」では、行灯の油を舐める「猫の精」が化身した老婆が登場し、一夜の宿を願った娘を襲いますが、旅の武者によりその本性を見破られ虚空に飛び失せるという場面があります。

 本来ならば、「岡崎」の話ですが、「岡崎」と「岡部」を掛けたのか、あるいは飛び去った猫が「岡部」で「猫石」となったという理解なのか、宿場の地誌に拘らない国芳だからこその作品のようです。「浅茅原の一ツ家」伝説をも彷彿とさせます。

*保永堂版東海道「岡部」は「宇津之山」で、『東海道名所図会』を受けての作品です。ただし、江戸時代の東海道は宇津の谷峠(旧道)を通っていないにも係わらず、広重作品には、その古道の趣があります。同図会の図版に「宗尊王 宇津の山通行」と題する旧道を描いた作品があって、その影響を感じます。

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