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「品川」 歌川国芳 伊場屋久兵衛

02_new「廿日闇 邪魔なす雲を 打ち払ふ 丸にゐの中の 月の卜風 梅屋」

 『東海道名所図会 巻之六』「武蔵 品川」には、「品川の駅は東都の喉口にして 常に賑わしく 旅舎軒端をつらね 酒旗(さかや)・肉肆(さかなや)・海荘(はまざしき)をしつらえ 客を止め 賓を迎えて 糸竹の音 今様の歌艶しく 渚には漁家(いさりのいえ)おおく 肴わかつ声々 沖にはあごと唱うる海士の呼び声おとずれて 風景足らずということなし。」(現代仮名遣いに改めています)と紹介されていて、保永堂版東海道「品川 日之出」もその線に沿って描かれていますし、国貞の美人東海道も「糸竹の音 今様の歌艶しく」を遊女によって表現しています。

 ところが、『東海道五十三對』の「品川」は、それと全く趣を異にしています。『東海道名所図会』に画題を見付けられない場合は、歌舞伎や人形浄瑠璃にそのネタを探してきた当ブログの分析方法を応用すると、これは、品川の鈴が森を舞台とする歌舞伎『浮世柄比翼稲妻』(うきよづかひよくのいなずま)「鈴が森」(『カブキ101物語』146頁参照)の白井権八であることが判ります。歌にある「丸に井」というのは、白井権八の紋を指します。暗闇の中、お尋ね者の権八を捕まえようとする雲助と権八が争っているところに、駕籠でやって来た幡随長兵衛が「お若いのお待ちなせえ」と呼び止める名場面です。

 国芳の絵では、背後の松原に駕籠でやってくる長兵衛が小さく見えます。長兵衛は実在の任侠で、初演の七代目団十郎以来、代々の団十郎の当たり芸となっています。また、右手の「南無妙法蓮華経」と刻まれた石塔は、舞台では正面に据えられるもので、それゆえ、国芳作品が舞台を素材にしていることが判ります。若衆姿の権八が見得を切る先には、雲が架かる月が描かれています。

*保永堂版東海道「品川」と、国貞の美人東海道については、本文に触れた通りです。

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