« 「日本橋」 歌川国芳 伊場屋仙三郎 | トップページ | 補説2 複数の絵師と版元による合同制作 »

補説1 異版・変わり図の存在

 『東海道五十三對』について、以下の5ヶ所の宿場に異版あるいは変わり図の存在が認められます。

◇戸塚 : 広重(伊場屋仙三郎)→広重(伊場屋仙三郎)狂歌の変更   
◇箱根 : 国芳(伊場屋久兵衛)箱王丸→広重(伊場屋仙三郎)湯上がりの女性
◇原  : 広重(伊場屋仙三郎)竹取物語→広重(遠州屋又兵衛)与右衛門の悪漢退治
◇見附 : 国芳(伊場屋仙三郎)源頼朝の金札鶴→広重戯筆(遠州屋又兵衛)弥次喜多のスッポン騒動
◇大津 : 国芳・広重(伊場屋仙三郎)傾城反魂香→広重戯筆(伊場屋仙三郎)大津絵たちの舞踊

 「戸塚」に関しては、他の4点とは違って、作品の絵とより深く関連する狂歌に変更したことによる修正版あるいは完成版と考えられ、後版に異なった意図があるとは思えません。しかし、「箱根」「原」「見附」の広重の3点の異版は趣向を大きく変えており、また「大津」を含めた4点は本来の『東海道五十三對』シリーズと比べてやや重厚感に欠ける作品と感じられます。解説によっては、複数の版元と複数の絵師とによる短期間での制作に由来する混乱の結果と評価する説もありますが、シリーズの宣伝(予告)用作品の臭いがします。もしくは広重作品に限っての異版ということからすると、東海道物の第一人者である広重人気にあやかり、営業や制作資金回収用の作品とも言えます。いずれにしても、版元にある程度の計算があっての作品群であると考えるべきです。

 なお、上に挙げた「見附」「大津」の他に、「二川」(伊場屋久兵衛)は弥次喜多のお化け騒動を描き、「広重戯筆」と添えられています。広重晩年の大作シリーズ『名所江戸百景』の中に、『江戸百景余興』と断った作品があります。百枚を越えても、なお、制作を続ける広重の自嘲の弁とされていますが、『東海道五十三對』の「広重戯筆」作品も、これと同様、シリーズの完成とはやや距離を置いた、スピンオフ作品の可能性があります。

|

« 「日本橋」 歌川国芳 伊場屋仙三郎 | トップページ | 補説2 複数の絵師と版元による合同制作 »

東海道五十三次」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197953/58475997

この記事へのトラックバック一覧です: 補説1 異版・変わり図の存在:

« 「日本橋」 歌川国芳 伊場屋仙三郎 | トップページ | 補説2 複数の絵師と版元による合同制作 »