六十二 醒ヶ井 金井谷五郎
版元:辻岡屋文助 年代:嘉永5(1852)年6月 「金井谷五郎」は、当該シリーズでは、松井田の「松井民次郎」、塩尻の「髙木虎之介」、それ以外では「宮本武蔵」などと同じく、読本などの登場人物として採り上げられる武芸者の一人です。金井谷五郎が慶安4(1651)年の由井正雪による幕府転覆の陰謀に加担し、後に自害したことを受けて、浮世絵や物語の世界で活躍させられています(怨霊信仰)。いわゆる『慶安太平記物』の中では、たとえば、安永9(1780)年1月、江戸外記座初演『碁太平記白石噺』(ごたいへいきしろいしばなし)において、宮城野信夫の仇討話に絡んで別筋として登場します。海鮫を退治した「髙木虎之介」に塩尻で鯨を持ってきたように、宮本武蔵が山鮫を退治する作品がある中、画中で「金井谷五郎」に山「鮫」を退治させています。これは、宿場名「醒ヶ井」に繋げるためのやや強引な便法です。標題の周りは、武者修行の道具で囲まれています。
コマ絵の形は、武者修行者ということで、刀の鍔の意匠です。英泉・広重版木曽街道の「酔ヶ井」は、宿場の西外れの実景ですが、国芳のコマ絵は、『木曽路名所図会』巻之一の「醒井(日本武尊居醒清水 腰懸石)」の図版を参照したと見え、「三水四石」を包括する「醒ヶ井」の宿場全体の風光です。コマ絵を拡大すると槍のようなものが二本見えるので、視点は違いますが、英泉・広重版の槍を持つ二人の中間がいるのと同様な情景を描いているのかもしれません。
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