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四十三 妻籠 安倍保名 葛葉狐

版元:湊屋小兵衛 年代:嘉永5(1852)年6月 彫師:多吉


Kn43  「安倍保名」と「葛葉狐」とくれば、享保19(1734)年10月大坂竹本座初演の人形浄瑠璃『芦屋道満大内鑑』の主人公で、とくに四段目口の「葛の葉子別れ」がよく知られています(『歌舞伎101物語』82頁)。本作品もその場面を画題とし、番付目録『これが江戸錦繪合』では、「大當 朧画大極上無類」と評価され、制作者側の評価として、当シリーズ中の代表作に挙げられています。江戸錦絵合の詳細は、『浮世絵芸術』(163号・2012年)、52頁以下を参照。

 話の骨子は次のとおりです。すなわち、安倍保名に助けられた白狐が、自害した保名の恋人榊の前に瓜二つな妹、葛の葉の姿で現れたのが機縁で、二人は阿部野に引き籠もり、子までなします。ところが、ある日、本物の葛の葉が訪れ、白狐はここにとどまれないことを悟り、我が子を残して信太の森へ帰る決意をします。その際、障子に「恋しくば尋ね来て見よ いづみなる信田の もりのうらみ くづの葉」の一首を残して去っていきます。この子こそ、後の陰陽師安倍清明となります。なお、「妻が森に籠もる」→「妻籠」(つまごめ・つまご)と考えられます。

 悲しげな人の姿の葛の葉が薄く透けるように描かれ、二重写しで、涙拭く狐の実体が見える表現は、版元側としては自慢の技法だったと思われます。標題の周りは、ススキ、(葛)蔓、桔梗の花で囲まれ、信太の森のイメージです。

Kom43  コマ絵は、葛の葉の形です。中に描かれているのは、英泉・広重版の「妻籠」とほぼ同じ風景です。妻籠宿の手前の峠から、北に見返す視点のはずです。

 ちなみに、作品四十一に登場する「平井保昌」の妻・「和泉式部」が前夫・和泉守と別れた後の歌に「あき風はすごくふくとも葛の葉の うらみがほにはみえじとぞ思ふ」とあって、これが上述の歌に影響を与えたという見解もあります。また、安倍晴明の母が橘(たちばな)氏であったことが、橘(きつ)→狐(きつね)となって、晴明の母・狐伝説が生まれたという推理もあるようです。

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