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六十六 越川 鷺地平九郎

版元:上総屋岩吉 年代:嘉永5(1852)年7月


Kn66  「鷺地(池)平九郎」は、太平記の世界、楠正成、楠正行(まさつら)親子の活躍を彩る人物です。山田意斎(案山子)の読本『楠正行戦功図会』(前編は文化4・1821年、後編は文化7・1824年)に登場します。富田林の農民の子ながら、足利直義の軍を討つために参集し、湊川合戦では17人の大将の首級をあげ、正成に見せたとあります。正成の家臣の鷺池九郎右衛門の養子となり、以後、鷺池平九郎と名乗ります。国芳の浮世絵にも度々描かれ、『本朝水滸傳剛勇八百人一個』などがあります。弟子の歌川芳年も『和漢百物語』で採り上げています。うわばみ、大猪などを退治する構図が多いのですが、本作品は前掲『楠正行戦功図会』を参照したのでしょうか、湊川合戦であげた首級を討った大鉞(まさかり)の血を川で洗っているところです。「血の川」→「(え)ちかわ」→「越川」という繋がりでしょう。標題は、槍、大槌、甲冑など、鷺池平九郎の武勇に因んで戦道具で囲まれています。

Kom66  コマ絵の意匠は、鷺池平九郎の名から、鷺鳥をかたどったものです。英泉・広重版木曽街道の「恵智川」は、宿場の南を流れる恵智(愛知)川とそこに架かる無賃橋を描いています。国芳のコマ絵は、愛知川の宿場から西国巡礼32番目の札所・観音正寺がある観音寺山を遠望している図と考えられます。

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