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六十四 鳥居本 平忠盛 油坊主

版元:高田屋竹蔵 年代:嘉永5(1852)年6月 彫師:朝仙


Kn64  「平忠盛」と「油坊主」の話は、元は『平家物語 巻第六』「祇園女御」に語られていて、白河上皇と忠盛との緊密な関係を示す逸話として知られています。そして、同時に多くの絵師が描く古典的画題でもあります。歌舞伎では、「だんまり」に取り入れられる場面です。

 平忠盛は、父親の代から白河院に仕え、荘園の取り立てや瀬戸内の海賊平定などによって、院から篤い信頼を得ていた人物です。平清盛の父と言った方が判りやすいかもしれません…。『平家物語』に紹介される話によると、白河院には祇園社(現在の八坂神社)の近くに祇園女御という側室がおり、ある雨の降る夜、院が祇園社の境内を通ると、青白く光るものがあり、院は鬼か、怪物かと思い、御供の忠盛に斬るように命じました。ところが、忠盛が斬らずに正体を確かめると、社の灯籠の灯に油を注いで歩く承仕法師(じょうじぼうし)でした。この坊主の被っていた藁笠に灯籠の灯が映えて、青白く光って見えただけのことでした。そこで、院は忠盛の沈着さを褒め、褒美に祇園女御を下賜されたという事です。そして、生まれたのが清盛ということで、「清盛は白河院の皇子か?」という伝説が生まれます。祇園社の「鳥居の本」での事件ということで、宿場名「鳥居本」に掛けられました。標題は、灯籠とこぼれた油の間に油坊主が身につけていた藁笠と下駄で囲まれています。

Kom64  コマ絵の意匠は、作品五十「御嶽」の悪七兵衛と同じく、平家の「浮線蝶」紋かとも思えるのですが、ヒゲの数からすると、「対の揚羽蝶」紋ではないでしょうか。英泉・広重版木曽街道の「鳥居本」は、摺針峠の「望湖堂」からの琵琶湖の眺めを描いています。『木曽路名所図会』巻之一にも「磨針峠」の図版がありますが、いずれも、国芳のコマ絵とは異なっているようです。コマ絵は、摺針峠を離れて「鳥居本」の宿場を見遣っているように思われます。

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