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十六 安中 清玄

版元:加賀屋安兵衛 年代:嘉永5(1852)年6月


Kn16  人形浄瑠璃・歌舞伎に『清玄桜姫物』という一系統があり、それは、清水寺の僧清玄が、参詣に来た桜姫の容色に迷い堕落し殺され、その執念が桜姫に付きまとうという内容を骨子とします。破れ衣に破れ笠の姿になった清玄が庵室で一心に妄信し、使いの男に殺される「庵室」の場が有名です。古くは土佐浄瑠璃に『一心二河白道』(いっしんにがびゃくどう)があり、同じ外題で、元禄11(1698)年に、近松門左衛門によって歌舞伎化されています。その他多くの作品があります(『カブキ101物語』108頁参照)。

 国芳作品も、この庵室の場を絵にしていて、不動明王の前でさえ桜姫に執着を募らせる清玄とその貧しい庵室の模様を表現しています。窓の外に一人の男が葛籠を背負って歩いてきますが、この葛籠の中に桜姫が押し込まれています。結果、清玄と桜姫は庵室で出会いますが、清玄はこの男に殺されてしまいます。国芳は、この緊迫する場面の直前を描いて、この後に展開する結末を予告するに止め、庶民心理を焦らせているのかもしれません。なお、「庵室の中」の場面ということで、「安中」となります。標題は、清玄が僧であるので、経文、経机、香炉などの仏具で囲まれています。

Kom16  コマ絵の枠は、一心に妄想を募らせる清玄に合わせて、「心」の字形となっています。英泉・広重版木曽街道の「安中」は、宿場を越えた「琵琶窪」「原一村」(『木曽路名所図会』巻之四)辺りを描いたと推測されますが、コマ絵に描かれる風景は、同じ風景を英泉・広重版とは視点を逆にして描いているようです。背景の妙義山の上に日没直後の三日月が浮かぶ情景です。(心という文字の点と点との切れ目でしょうか?)

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