十一 本庄 白井權八
版元:湊屋小兵衛 年代:嘉永5(1852)年5月 彫師:多吉 「本庄」と「白井権八」との関連は、江戸の人々にはすぐに理解できたと思われます。四世鶴屋南北作の歌舞伎『浮世柄比翼稲妻』(うきよづかひよくのいなづま)の序幕で、権八は国許鳥取の奸臣・本庄助太夫を斬って江戸へ出奔するからです。いわゆる「助太夫邸の堀外」の場面です。その場面では、助太夫を斬った権八が白刃を持って堀外に出るとちょうど雨が降っており、権八は家人を白刃で威嚇しながら、下駄を揃えそして履き、蛇の目の傘を奪って、悠々と消えて行きます。国芳の作品が、この場面を念頭においていることが判ります。また、国芳の作品のベースは、やはり、役者絵にあるのではないかと感じられます。なお、直前の斬り合いについては暗示するに止めていますが、このシリーズではよく見られる手法です。標題の周りは、ここに登場する、合羽、竹の子笠、蛇の目傘、刀などの道具で囲まれています。
コマ絵の枠は、全体作品の権八の着物に描かれる井桁紋になっています。これは、歌舞伎などで権八を特徴づける記号です。英泉・広重版木曽街道の「本庄」は「新町」に近い「神流川渡場」を主題としていて、宿場風景を描くコマ絵の情景とは全く違うようです。おそらく、コマ絵は、英泉・広重版が通り過ぎてしまった「本庄」の宿場を描いているものと考えられます。地理的に修正したようです。
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