« 廾二 小田井 寺西閑心 | トップページ | 廾四 塩名田 鳥井又助 »

廾三 岩村田 大井子田畑を潤す

版元:伊勢屋兼吉 年代:嘉永5(1852)年7月


Kn23  「近江の大井子」伝説については、すでに国芳には、弘化期の『東海道五十三對 水口』と『賢女烈婦傳 大井児』という先行する作品があって、怪力をもって大石(岩)を動かし、田畑に水を引くことができた快女児として描かれています。『東海道五十三對』では、その詞書きは、『古今著聞集 巻第十』(建長6・1254年)からの引用でした。以下の通りです。

「昔 高嶋といふ所に百姓の娘大井子(おほゐこ)といふ大力の女あり。力ある事を恥て 常にハ出さず。農業の間にハ馬を牽 旅人(りょじん)を乗て活業(なりわい)とす。折節 田に水をまかする頃 村人大井子と水の事を論じ 女と侮り 彼が田へ水のかゝらぬやうにせしかバ 大井子憤りて ある夜六七尺四方なる石を持来り かの水口(みずくち)に置けり。夜明て村人おどろき数人にて取んとすれど 中々動ず悩しに 大井子が仕業ときゝ 詮方なく種々(いろいろ)侘びけるゆへ 彼大石をかるがると引退(ひきの)けり。大力におそれて水論ハ止けるとぞ。今に此地に水口石(ミなくちいし)とて残りける也。」

 本作品では、大井子伝説と「岩村田」がいかに係わるかが問題です。「岩を村の田」から退けた大井子という繋がりでしょうか。標題の周りは、鋤、鍬、笠、簑、藁など農作業をイメージする道具などに囲まれていることを考えると、振り袖姿の大井子というのは、やや違和感があります。見開き一対としての作品のバランスも考え、当世風の美人風俗あるいは狂言風に仕立て直して、当シリーズの人気を図ったのかもしれません。

Kom23  コマ絵の形は、大井子の怪力に因んで、農作業の道具から石臼が選ばれています。描かれている風景は、英泉・広重版木曽街道の「岩村田」の遠景部分を拡大するものではないでしょうか。つまり、穀倉地帯佐久平の中心岩村田の田園風景を描くもので、背後の山は、浅間山の山体崩壊(塚原岩屑)によって生まれた流れ山もしくは浅間山の外輪山の様子です。なお、全体図もコマ絵もともに農村風景で統一されています。

|

« 廾二 小田井 寺西閑心 | トップページ | 廾四 塩名田 鳥井又助 »

木曽街道六十九次」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197953/57218527

この記事へのトラックバック一覧です: 廾三 岩村田 大井子田畑を潤す:

« 廾二 小田井 寺西閑心 | トップページ | 廾四 塩名田 鳥井又助 »