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二 板橋 犬塚信乃 蟇六 左母二郎 土’太郎

版元:住吉屋政五郎 年代:嘉永5(1852)年5月 彫師:須川千之助


Kn02  後で再度触れますが、コマ絵に戸田川の渡しが描かれています。それに対応して、全体図では、戸田川の上流神宮(かには)川を舞台とする曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』第三輯巻之二の場面が画題とされました。すなわち、八犬士の一人で孝の玉を持つ「犬塚信乃」が、川にわざと落ちた船頭「蟇六」を助けようとするに乗じて、「土’太郎」が信乃の水死を謀り、その間に関東公方足利家の家宝・村雨丸を「左母二郎」がすり替え奪うというものです。画中手前の抱えられた男が蟇六、背後から信乃に近づく刺青の男が土’太郎です。水面下の水流を藍の濃淡で表現したところは、識者に好評です。標題は八犬伝に因んで10匹(?)の子犬に囲まれています。

Kom02  コマ絵の枠の形は、女の子として育てられた信乃が子供の頃着ていた着物の「蝶」模様を意匠するものです(『南総里見八犬伝』第二輯巻之五参照)。これによって、「日本橋」に引き続き、全体図の場面・人物とコマ絵とが深く関連していることが明らかになります。このことは、以後、コマ絵の意匠を考える際の重要なヒントにもなります。先に触れたように、コマ絵は「板橋」と「蕨」の間にあった戸田川を描くもので、「板橋」を一つ飛ばして、英泉・広重版木曽街道の「蕨之驛 戸田川渡場」が元になっていることが判ります。ただし、対岸の馬や旅人達など詳細部分は省略されています。

 この時点では、全体図の情景とコマ絵の風景とは一応関連していると言えましょう。

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