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54.東海道五拾三次之内 大津 走井茶屋 :大津ノ圖

 「大津」に入るには、東海道は古来より有名な「瀬田の唐橋」を渡っていきます。三上山(近江富士)に棲む大百足を矢で射って退治する、藤原秀郷が龍女と出会ったのがこの橋でした。大百足退治の結果、多くの宝物と尽きることのない米俵を貰ったことから、俵藤太と呼ばれました(当ブログ・チリメン本『俵藤太』参照)。

Kunisada054_n  国貞は、例によって、『東海道名所図会』より、大津絵を売る店先と旅人達の情景を描いています。「鬼の念仏」(夜泣き直し)の看板が目を引きますが、その他に、「外法大黒」(無病長寿)、「雷」(雷除け)、「鷹匠」(五穀豊穣)、「藤娘」(良縁)、「瓢箪鯰」(水難除け)、「槍持奴」(道中安全)、「弁慶」(火難除け)、「矢の根男」(悪魔退治)などがあります。最後の「矢の根」は、大百足を矢で射って退治した俵藤太伝説からも理解できると思われます。「大津」には、関寺小町の伝説がありますが、ここに描かれる美人は、京島原遊女の先取りかもしれません。また、着物の杓の柄からすると、女性に人気のあった走井の茶屋を想起させようとしているように思われます。

 国貞の画題を避けつつ、広重もまた『東海道名所図会』より、副題にある「走井茶屋」を選びました。走井は、背後の山から勢いよく走り下る山水が、井戸より溢れんばかりに湧き出す名所です。広重作品には、名物茶屋(餅屋)の前の井戸で、男が桶に手を入れている様子が描かれています。これは、琵琶湖のもう一つの名物、源五郎鮒を冷やしているのでしょう。「水口」以来、引き続き、名物紹介の絵となっています。

 ただし、これでは『東海道名所図会』そのままなので、物資流通、集積の大津湊を意識して、米俵や柴を牛車で運ぶ人足を加え、京(逢坂山)に向かわせたようです。米俵を運ぶ最初の牛車は俵藤太伝説、木材を運ぶ牛には関寺(牛塔)伝説があるので、後の二台が関寺(牛塔)伝説を暗示するものならば、なかなかのアイデアです。なお、後版では、背後の山が削られています。これは、イメージとして入れた逢坂山の位置が大きくずれているという指摘を受けてのことでしょう。牛車の来る方向は、琵琶湖湖畔ですから、山はあってはいけません…。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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