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06.東海道五拾三次之内 戸塚 元町別道 :戸塚圖

 前回までに5枚の作品を紹介し、本日は、「武蔵国」から「相模国」に移ります。シリーズ物の浮世絵は、5枚ないし10枚セットで販売されることが多いので、もし保永堂版東海道にも当てはまるなら、ちょうど第一セットが終わり、第二セットに向かうことになります。便宜的に、当ブログも、5枚×11セット=全55枚という形で紹介していくつもりです。たまたまかもしれませんが、各セットの巻頭の一枚目(1、6、11、16、21…)に当たる作品には、力が入っているように思います。

 広重作品の右側の吉田橋を一人の老僧が振分荷物を担いで渡ってきますが、その先の道標に「左かまくら道」とあり、これが副題の「元町別道」です。軽尻馬から旅人が下りようとし、一人旅の女が菅笠の紐を解きかけています。この「こめや」の旅籠には、「大山講中」「月島講中」「百味講(江の島参り)」「神田講中」「太々講(伊勢参り)」などの講札が軒先に下がり、講(共通の信仰を持つ人々の集まり)指定の安全な旅籠であることが判ります。先の女も、女性に人気のあった江の島参りのために、ここに足を寄せたのかもしれません。あるいは、『仮名手本忠臣蔵』四段目の後に挿入される所作事「道行旅路花婿」で、早野勘平が腰元お軽に「足は痛みませぬかや」と優しく問うたのがここ戸塚でしたので、それを意識して、旅の女を登場させたのかもしれません。

Kunisada006_n  広重が戸塚への到着を題材にしていたのに対して、国貞は戸塚からの出発風景に変えて、旅籠の女も脇差しを馬の男に渡そうとしています。そして、ちょうどその空間に、手拭いを肩に掛ける粋な年増の美人を立たせ、足下には火鉢を置きました。前回が年若い女性だったので、それと対照させたようです。この年増は旅籠にゆかりの女性かと思われますが、女将には見えない伝法肌が気になります。やはり、「保土ヶ谷」の少女との対比が核心なのでしょう。なお、広重も、後に異版で、馬から下りる様を馬に乗る様に変えているところをみると、何かクレームでもあったのでしょうか。双六風に勘案すると、馬(勝負)を下りて(旅籠に)一休みとなるのですが、商売する立場からすると縁起でもないと言われたのでしょう。確かに、米屋が「下る」(くだる)では、よろしくないかもしれません。

 今回の戸塚の作品では、庶民にとっての東海道が、伊勢参り、大山参り、江の島参り等や講と深く結びついていることが明確になりました。そして、作品鑑賞の楽しみは、ドラマの舞台を追体験したり、読み解いたりするところにもあることが理解いただけたのではないでしょうか。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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