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04.東海道五拾三次之内 神奈川 臺之景 :神奈川之圖

 広重の作品の前史として、十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』の存在を忘れてはいけません。つまり、弥次郎兵衛と喜多八を主人公とする道中形式の文学で、江戸時代のベストセラーをです。本作品では、広重は、「たるや」「よしや」などの看板のある茶屋の前で下女に袖を引っ張られる二人連れを描いていますが、弥次・喜多の二人を彷彿とさせます。実は、これと同じ趣向は、同シリーズ「御油 旅人留女」などいくつかの場面で見つけられ、広重が明らかにこの街道旅行ブームを取り込んでいることがわかります。純粋に街道の風景を描いた訳ではないのです。

 弥次・喜多の二人は、どちらかと言えば物見遊山の旅ですが、作品中には、親子連れの巡礼と厨子を背負った六部(ろくぶ)(法華経を納める目的で諸国の寺社を遍歴する行脚僧)も描かれ、動と静との対照がなされているようです。前回に続き、ここでは、物見遊山、信仰・修行の旅が街道を旅する人々の内訳に加えられました。

Kunisada004_n  さて、副題に「臺之景」とあるように、ここからの海岸線の景色は評判の美しさで、それ故多くの茶店があるだけでなく、また、海上に小舟が浮かびここは魚釣りのメッカでもあります。娯楽色の強い宿場ですね。広重の作品が穏やかに表現した点を、国貞は、強弱を付けて、芸者風の美人を添えて明確にしました。懐紙を帯に挟むのは、粋な着こなしです。旅人が強く袖を引かれるのも、こんな綺麗な芸子衆がいるからにほかなりません。

 東海道は、品川から海岸線沿いに進む事情もあるのでしょう、「神奈川」の構図は、先に描かれた「品川」とかなり似ています。国貞は、しかしながら、旅籠の多い品川では遊女、茶店の多い神奈川では芸者と宿場の性格を微妙に描き分けています。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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