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09.東海道五拾三次之内 大礒(磯) 虎ヶ雨 :大磯之圖

 副題が絵解きのヒントになっている作品です。「虎ヶ雨」の元となっている虎御前は、『曾我物語』のヒロインで曾我兄弟の兄・十郎祐成の恋人(遊女)です。建久4(1193)年5月28日に源頼朝が催した富士の裾野での狩に夜陰に乗じて忍び込んだ兄弟は、父の仇工藤祐経を討ち取りましたが、兄十郎はその場で新田忠常に斬り殺され、弟五郎は生け捕りになった後、処刑されました。俳句の季語にもなった「虎ヶ雨」は、旧暦5月28日に降る梅雨時の雨を言います。曾我兄弟を弔う虎御前の涙雨です。広重の「大磯」は、当地出身の虎御前に因んで、大磯の海岸に降る雨の情景を描きました。したがって、単なる風景画ではなく、叙情性の高い作品なのです。

Kunisada009_n  となれば、国貞の美人東海道の女性は、十郎ゆかりの浪千鳥の着物の柄からも推測されますが、虎御前であることが判ります。広重が背景に海岸線を入れ込んだのに対して、国貞はその海の部分をほとんどカットし、それに換えて、虎御前の着物の柄を網干す浜辺の風景として補っています。

 大磯の雨がこのように『曾我物語』と係わって描かれたとするならば、シリーズ後半に描かれた「庄野」「土山」の雨も、歴史物語などの舞台との関連を探ってみる必要があると思います。とくに、「庄野」は、副題が「白雨」となっていて、相当強い思いに裏打ちされた作品ではないかと想像しています。

 前回「平塚」と今回「大磯」とは、その趣はいずれも『曾我物語』由来ということで、作品を一体として鑑賞してみることを強くお薦めします。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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