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05.東海道五拾三次之内 保土ヶ谷 新町橋 :保土ヶ谷圖

 広重の「保土ヶ谷」作品は、宿場に入る手前の新町橋(帷子橋)に構図の中心を置き、編笠を被った虚無僧と従者を従える駕籠の一行が橋を渡る次第となっています。その先には、店先に女二人が立つ「二八そば」屋があり、右手からは、「お伊勢参り」の一行の帰り姿が描かれています。橋を渡る視線の流れの先を見ると、農夫とその子供を配する田園風景に空白の空があって、開放感のある広重お得意の絵組みとなっています。

Kunisada005_n  そばといえば信濃の特産と信州の方は言いたくなると思いますが、この新町の「二八そば」屋は、広重の別の東海道シリーズにも何度か登場し、当時、著名であったと推測されます。ここに有名なそば屋があったからこそ、広重は、橋の向こう岸に「お伊勢参り」の一行を敢えて描き加えたのではないでしょうか。その理由は、国貞の美人東海道を見るとよく判ります。国貞は、人形遊びをする少女を美人として選んでいます。これは、38歳の帯屋長右衛門と14歳の信濃屋お半の恋を主題とする『桂川連理柵』(かつらがわれんりのしがらみ)を想定しての選択なのです。同狂言では、二人の出会いは、伊勢参り下向に際して石部で同宿することが機縁となっています。当時評判の浄瑠璃や歌舞伎を作品の下敷きにしていることが判ります。このような状況を一度押さえておくと、今度は、東海道石部の宿ではどのように描かれているのかが気になります。これは、また、後のお楽しみということで…。

 いずれにせよ、東海道の旅の内実の一つとして、本作品によってお伊勢参りが加えられたことが重要です。実は、庶民にとっては、東海道はお伊勢参り(伊勢講)のための街道であったと考えています。その辺のことは、順次解説していきますね。ともかく、広重の作品構想の中に、浄瑠璃や歌舞伎などがあったことは理解していただけたでしょうか。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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