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31.東海道五拾三次之内 舞坂 今切真景 :舞坂ノ圖

 副題「今切真景」(いまぎれしんけい)となっていますが、中央の突き出た黒い山は実際にはなく、真景とは程遠い絵です。これは、31番目ということを勘案すると、五枚組みのトップ作品としての売り出し文句と考えられます。かつては、舞坂から荒井までは砂州で繋がっていました。ところが、地震と高潮で砂州が切れ、まさに「今切」となりました。浸食を防ぐために打たれた波除杭を前面に配置し、ムシロの帆を上げた舟とアサリ漁をしている漁船(いさりぶね)が描かれ、広重お得意の生活景をなしています。二点透視の焦点にそれぞれ白い帆と真白き富士山を置く構図で、遠くに覗く富士は、「日坂」以来久しぶりです。この点で、中央背後の黒い岩山は、両サイドの帆と富士山の白さを際立たせるために、大きく描かれていることがよく理解できます。また、広重の言う「真景」が、実景という意味ではないことも同時に判ります。

Kunisada031_n  国貞の美人は、鏡台の前に置かれる「仙女香」の白粉で化粧をする様を描いています。湖上の船の帆の白さと富士山の真白さとを、美人の白粉に掛けた作品と推測されます。逆に、広重の言う「真景」とは、美しく化粧した景色のことを意味していると判断されます。

 なお、『東海道名所図会』によれば、かつて、浜名湖に注ぐ浜名川に橋が架かっていて、同図会はその想像図を載せています。今切口ができてからは、河口も塞がり、橋も無くなってしまいましたが、その図会に対して、現在の今切の様子を伝えるという意味で、広重は「真景」という言葉を使っている可能性もあります。そうすると、今度は、「舞坂」の作品は、同図会を基礎に加除を施して制作された改訂版ということになります。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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