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29.東海道五拾三次之内 見附 天竜川圖 :見附ノ圖

 洪水で度々被害を出していた「あばれ天竜」を控えた「見附」の宿です。天竜川は、そもそも信州諏訪湖から流れ出る大河で、当時、徒行渡しではなく、舟渡しが行われていました。広重も、その情景を中洲を挟み小天竜から大天竜の方向に描いています。中洲での乗り換えを手前の船頭は手持ち無沙汰で眺めています。後で国貞作品の表現と比べますが、遠くを見るように佇む人物は、広重作品に頻繁に登場して、風景に深い情緒を与える役割を果たしています。対岸の中ノ町は、江戸と京のちょうど中間の町と言われます。すなわち、当ブログも、いよいよ東海道の中間までやって来たことを意味しています。

 日常生活を拡大して描いた広重の作品は、実景描写というよりは、情緒や俳諧の構想世界を優先させて表現した作品であることが多く、当該作品もその典型例です。なお、初摺作品は、画中にぼかしを指定した二本の墨線が残っていて不自然でしたが、その後に削られました。浮世絵の制作過程が理解できるという点では興味深いものです。ただし、「急ぎ仕事」になっている状況も想像できます。国貞の作品が迫ってきたからでしょうか。

Kunisada029_n  美人東海道は、神社仏閣などへ参詣する、かなり上等の美人です。「川崎」作品と共通します。どこへの参詣かといえば、「見附」の「矢奈比売」(やなひめ)天神と考えられます。この神社には有名な伝説があり、信州駒ヶ根の(山)犬が神社に住み着いた狒狒を退治するというもので、「竹箆太郎」(しっぺいたろう)「早太郎」伝説と呼ばれました。天竜川の洪水、人身御供、仏教説話などが結びついた話で、他面「あばれ天竜」を裏付ける話でもあります。(詳細は、当ブログ・チリメン本『竹箆太郎』をネット検索下さい。)

 ところで、国貞作品の船頭を広重のそれと比べると、次の仕事に備えた隙のない様子が見て取れます。気持ちと体が一致していますが、広重の描く船頭等の姿勢は棒立ちで、気持ちが体の隅々まで行き渡っているようには見えません。その野暮なところが、一般庶民には、かえって新鮮だったのかもしれませんが。広重作品の特徴には、粋な町人絵師とは違う、武家出身絵師の生き方が反映しているものと考えています(後掲「御油」参照)。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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