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21.東海道五拾三次之内 丸子 名物茶屋 :鞠子ノ圖

 前二回は、「江尻」、「府中」と徳川家康にゆかりの深い場所でした。そのことが影響してか、三保の松原、安部川の徒行渡りという『東海道名所図会』にも描かれる無難な題材に終始しました。でも、広重の東海道シリーズの版行企画は、十辺舎一九の『東海道中膝栗毛』の大ブームを抜きには語れないので、ご当地「府中」などで全く触れないのも不自然というものです。そこで、ここ「丸子」で弥次・喜多らしい旅人を登場させ、また、本格的に名物紹介の作品を制作しました。保永堂版シリーズ全体としては、ういろうや安倍川餅など、意外に名物紹介は少ないのですが、それも旅をしていない広重に名物体験がないので、自信を持って語ることができない事情があるのかもしれません。

 広重の作品を見ると、梅の花咲く茶屋に、「お茶漬」「酒さかな」「名ぶつとろヽ汁」などと宣伝文句が書き込まれていて、芭蕉の「梅若菜丸子の宿のとろろ汁」を彷彿とさせる世界を読み取ることができます。くわえて、店内には、弥次・喜多と思われる人物がとろろ汁を食べ、酒を飲んでいるようです。『東海道中膝栗毛』の世界をも重ね合わせたものです。同作品中では、店の夫婦の喧嘩のせいで、とろろ汁を食べることができなかった二人に、広重は静かに食べさせてあげたようです。赤子を背負った店の女や、店の屋根の烏が呑気な雰囲気を伝えています。俳諧と諧謔の世界ですね。

Kunisada021_n  広重は、後版で「丸子」から「鞠子」に地名表記を変えました。国貞も、「鞠子」を使用しています。国貞の作品では、芸者風の美人の傍らに盃が二つ浮かべられています。広重作品では、どうしても、「とろろ汁」に目が行き勝ちですが、よく見れば、「酒さかな」の店でもあって、酒を燗する道具が置いてあったり、天井から吊した巻藁には串刺しの川魚が刺してあったりしています。したがって、国貞は「酒さかな」の色気の世界を選びました。二人の東海道の視点の違いです。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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