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19.東海道五拾三次之内 江尻 三保遠望 :江尻之圖

 広重作品の特徴の一つは、どんなに小さくても、人々の生活する姿が描き入れられていることが多いことですが、「江尻」では、それをほとんど読み取ることができません。だから、駿河湾の中に延びた三保の松原を主題に「三保遠望」の名所絵ということになるのでしょう。その部分に関しては、『東海道名所図会』をそのまま参考にしたようです。しかし、同図会には、徳川家康を最初に埋葬した久能山(東照宮)の紹介もありますが、もちろん、広重は慮って掲載を避けています。

 近景は、清水湊の街並みと湊に停泊する二列の廻船が、そして松原越しには、外洋に通じる二列の廻船が、それぞれ視線を広い海上の空間に向けさせ、左遠景の愛鷹山と好対照を見せています。つまりは、黒々と生い茂る三保の松原に降り注ぐ日差しとその開放感こそを、本当のテーマとしたかったのかもしれません。

Kunisada019_n  国貞は、荷物を小脇に抱え、笠の下に黒い角帽子を被る旅姿の美人を描いています。鼠色の小袖と合わせると比丘尼のようです。「天の羽衣」伝説と「尼の衣」とを掛けて描かれたのでしょうか。あるいは、久能山(東照宮)を意識して僧体姿としたのかもしれません。その背後には、光のハレーションを起こしている海上が描かれています。これは、三保の松原を遠望する江尻の日差しがテーマになっていることの証と思われます。つまり、天もしくは日光の象徴です。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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