« 12.東海道五拾三次之内 三島 朝霧 :三嶋之圖 | トップページ | 14.東海道五拾三次之内 原 朝之富士 :原ノ圖 »

13.東海道五拾三次之内 沼津 黄昏圖 :沼津圖

 これより、「駿河国」に入ります。シリーズでは、初めての明月の作品です。まさに「黄昏」時、「沼津」の宿場に向かう三人の旅人、その中でも、とくに天狗の面を背負う金毘羅参りの男が目を引く構図です。金毘羅は、讃岐にある象頭山(ぞうずさん)金毘羅大権現のことで、海上交通の守り神として広く信仰されていました。また、男の背負う天狗は、金毘羅を守護する猿田彦を表したもので、背中の天狗を拝んだ人々からお賽銭を集め、本人に代わって金毘羅にお参りしてくれる、「代参」の一種を描いていると考えられます。つまり、金毘羅さんの方から出張してきた形です。その前を歩く女の二人連れは、前回「三島」を立った巡礼とする向きもありますが、喜捨を受ける柄杓を手にするところを見ると、比丘尼の師弟ではないかと推測されます。比丘尼は本来は女性の僧侶ですが、絵解きなどをして芸人的な性格もありました。

 彼ら三人は、満月をバックに、なぜ、狩野川沿いに三枚橋(沼津)の方に歩いているのでしょうか。このような絵組みの動機を考えてみましょう。沼津の狩野川河口は、川湊としての機能を持ち、江尻や吉田への航路が開かれていました。すなわち、水運・漁業など港湾関係者が多くいる宿場でもあるのです。名前が、「沼」と「津」ですからね。となれば、海上交通の守り神として金毘羅の代参は多くのお賽銭を期待できたでしょうし、旅の道連れの比丘尼も喜捨を容易に受けることができたと思われるのです。そして、月は海と係わりの深い天体ですし、満月は大潮を意味します。こんな構想から、広重は「沼津 黄昏圖」を制作したと解いてみました。

Kunisada013_n  国貞は、落ち着いた雰囲気の美人を月の前に立たせています。足下には、紅葉(楓)が置かれていますが、秋の記号であるのはもちろん、天狗の象徴でもあります(後掲「掛川之圖」参照)。となれば、金毘羅参りあるいはその天狗に掛けた紅葉狩りの美人ということになりますか。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

|

« 12.東海道五拾三次之内 三島 朝霧 :三嶋之圖 | トップページ | 14.東海道五拾三次之内 原 朝之富士 :原ノ圖 »

東海道五十三次」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197953/51416880

この記事へのトラックバック一覧です: 13.東海道五拾三次之内 沼津 黄昏圖 :沼津圖:

« 12.東海道五拾三次之内 三島 朝霧 :三嶋之圖 | トップページ | 14.東海道五拾三次之内 原 朝之富士 :原ノ圖 »