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10.東海道五拾三次之内 小田原 酒匂川 :小田原之圖

 広重作品は、人物を小さく表現し、風景主体の古典的図会のような絵組みです。次の宿場「箱根」のダイナミックな描法を意識して、平易な構成に努めたのでしょう。『東海道中膝栗毛』にも書かれているように、「小田原」は、副題「酒匂川」(さかわがわ)の川渡りが注目されていて、人足によって旅人や駕籠が輦台(れんだい)に乗せられ担がれる様、肩車される様がよく描かれています。槍持のような人物もいて、武家の一行と思われます。大名行列や武家と城との組み合わせは広重作品の特徴ですが、ここでも、遠景の箱根外輪山の麓に、これも小さく小田原城が描かれていて、その手前には城下の街並みなどが見えています。このように大名行列等を描き加えることは、空間的広さの表現の他に、画中に武家関連の建物などがあることを暗示する、一種の方法論と見るべきでしょう。

Kunisada010_n  小田原は、箱根の関を控え、江戸から二泊目の宿として利用されることの多い所で、名物「外郎」(ういろう)という薬も、本来は、峠越えの体調を整えるためのものとして生まれたのでしょう。国貞は、そのような状況を踏まえて、ご馳走の並ぶ席亭の芸妓を美人として描き入れています。旅に備え、鋭気を取り戻してもらおうとの配慮です。宿場の特徴を端的に捉える国貞の表現力も冴え渡っています。

 国貞には、広重の作品を背景に転用し、美人を加えただけとの評価もありますが、両作品を比べてみると、実際には、国貞は広重の足りない部分を補い、怪しい表現を正していて、是非とも再評価の必要なシリーズだと思います。

*掲載作品は、国立国会図書館蔵です。

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