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裏富士「相州仲原」

Hokusai42 仲原は、江戸・仲原・大山と繋がる仲原道・大山道の交錯する宿場で、その大山詣りの風景を庶民生活と併せて描いています。大山講の信者を意識した作品と言うことができます。

 作品の中央部分に、大山寺の本尊である不動明王に縁の石仏が据えられ、富士の麓に描かれる丹沢山系(大山)と向き合っています。ところが、この石仏を見る者の視線は、背後から同時に富士にも向けられるように配置されています。視点を変えることによって、たとえば、「登戸浦」では神社の鳥居を富士の鳥居のように見せていますが、北斎が時々示す絵組みの応用をここに発見することができます。石仏は、大山の依代であると同時に富士の依代でもあることは、大山の背後に保護者のように描かれる富士によって、視覚的に容易に理解できます。

 この石仏を中心に日差しが明暗法で表現され、その日の中に六十六部の親子、弁当を頭に乗せる母子、川で漁あるいは貝採りをする男、天秤棒で荷物を運ぶ行商人、大山講の御師などが収まっています。また、版元の商号を付けた風呂敷を背負う男は、大山と富士に目を向けています。大山詣りを入り口として、結果的には、富士の日神と水神との交錯する、豊かな田園生活を紹介する作品へと落ち着いています。

 大山詣りは富士詣りに通じる、というメッセージがあるように思うのですが、いかがですか。何度か繰り返して述べていますが、街道物、道中物の色合いが濃厚な作品の一つであることは確かです。しかし、それを入り口として、富士に導かれた世界がやはり表現されていると見るべきように思います。

 なお、作品の右下方に描かれる鳴子の紐は、三角の富士を作って、遠景の富士と向き合い、さらに石仏にも触れているように見えます。近景に富士世界を出現させる北斎の技は、ここに来ても十分に機能しています。さらに、遠景の富士の左側の雲模様が、「大」という文字に見えるのですが…。

*掲載の資料は、アダチ版画です。

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