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裏富士「駿州片倉茶園ノ不二」

Hokusai44 引き続いて、木花開耶姫命の恵みあるいは豊穣の世界を描く作品です。富士の麓近くまで茶畑が続き、富士はその茶畑がそのまま山容となったかのように描かれています。つまり、「茶の富士」というわけです。

 中景から近景にかけては、茶摘み姿、天秤棒で茶を運ぶ農夫、版元の商号を入れた腹掛けなどをつける馬で茶籠を運ぶ様を連ねて、お茶の生産風景を紹介する趣旨でしょう。ただし、残念なことに、北斎は、お茶と稲とを混同している感があって、色や植え方など、現実のお茶の生産とは異なっています。藁を秋の季語として使うことが多い北斎の作画傾向からすると、秋の収穫風景を表現しているのは間違いありません。同時に、そのお茶という恵みが、富士に由来することを物語るものであることも言うまでもありません。

 なお、駿州はお茶の生産の盛んなところですが、「片倉」という地名は不明で、他の場所の誤記ではないかと言われています。そうであるにしても、北斎の描こうとしたものは、富士の豊かな恵みの世界ですから、絵の目的は十分に達成しています。また、地名や場所よりも富士の役割に重心があるという意味で、名所絵への過渡期の作品とする所以です。

*掲載の資料は、アダチ版画です。 

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