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冨嶽三十六景「東都駿臺」

Hokusai05  富士(神霊)を近景の庶民生活に引きつける方法として、富士に相似する三角形(△)、富士(神霊)の当体の丸(○)、御柱・鳥居などの依代、そして視線の流れの使用等を挙げることができます。その他にも北斎が利用している方法は何かないかと言いますと、これから紹介する「東都駿臺」に使われているものがあります。

 当該作品は、富士を坂の上から「見下ろす」構図を採用するものです。幕臣の屋敷が多く、その甍の波が続く駿台から頭を覗かせる富士を描き、近景の右手には、その富士よりも高く、瓦屋根の二階屋を描き加えています。この絵組みの特徴は、近景が富士山頂と同じか、あるいはそれより高いという印象を与える効果を狙ったものです。つまり、近景を富士山頂世界と同一視している点が重要です。

 もう少し細かく見ると、大きな荷物を背負って坂を登る商人風の男が手前におり、頭に三角の扇子を翳しています。この三角を富士だとは言いませんが、これは左手上方からの日差しがあることを表しています。富士山頂と同じ、日神の日差しを受ける世界が近景に展開していることの象徴です。その男の右にも、日除けの下で商いをしている風の人物が覗いています。駿河台の対岸の坂の上に、富士神霊世界が存在していることを物語っているのです。

 中景の所に大木が右に傾いて立っています。何となく、「神奈川沖浪裏」の大波のように見え、あるいはそこに富士神霊の当体の丸(○)が隠されているのかもしれず、私は「海上の浪」に対して、「地上(甍)の浪」図と呼んでいます。それはともかく、供を連れる武士、巡礼者、行商人、手代など、近景にいる人々に当たる日差しは、間違いなく、富士神霊世界のものだと思われるのです。

*掲載の資料は、アダチ版画です。

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