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冨嶽三十六景「隠田の水車」

Hokusai34 川の手前の近景に水車を、遠景に富士を配置し、一見すると三角と丸(半円)の対立的構図のように見えます。ところが、丸が富士神霊の当体を表現するものという当ブログの立場からすれば、水車を巡る農村風景に富士神霊の世界を発見する趣向の絵であることが判ります。

 粉を挽くために荷物を運ぶ二人の男、水車の水で何かを洗う女達、そして亀を引く童など、全ての者が水車あるいはその水を通して、富士神霊に触れる様を描いていると理解できます。農村の日常生活における水垢離とでもいうべき風景でしょうか。富士講では富士神霊を日神に見なし、富士浅間神社本宮では火を鎮める水神と見なすと言いますが、いずれにしても、「隠田の水車」の近景は、富士の神霊世界であることに間違いはなさそうです。本シリーズ「深川万年橋下」と比べると、半円(橋・水車)に亀(万年・童の亀)というように、同様の道具を使っています。画中の童は神童で、亀は神亀仕立てなのかも知れません。

 こうして見ると、「隠田の水車」は、農村の風景の中に富士世界を垣間見る趣の作品であって、背後の富士は、北斎によって綿密に観察された富士ではなく、ここが富士世界であることを指し示す記号に近い存在と考えられます。その意味で、このシリーズを富士の風景画と断ずることには躊躇を覚えるのです。

 なお、北斎描くこの場所は、現在の渋谷区原宿辺りと言います。風俗や文化の最先端地域の一つですが、当時も、富士信仰という流行の風俗(?)の題材となった土地柄であったことは、何かの因縁でしょうか。

*掲載の資料は、アダチ版画です。

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