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冨嶽三十六景「下目黒」

Hokusai22  窪地の底に富士を「見下ろす」構図です。先の「東都駿臺」と同じ絵組みです。したがって、富士の頂上世界を下目黒の地に見るという趣向です。特徴の一つは、画中左の中景に農夫が鍬を担いで坂を登っている部分です。「東都駿臺」にも、同じ部分に人物二人が坂を上下していました。富士よりも高いところに人を描いて、近景に富士頂上世界を展開するための工夫です。

 中央右寄りに二人の鷹匠と跪(ひざまず)く農夫が描かれています。下目黒の地が幕府の御鷹場であったことを示唆すると同時に、鷹という鳥に富士山頂と見なされた当地の高さを物語らせようとしているのではないでしょうか。近景中央の藁葺き屋根の小屋の前には、鍬を持ち、子を背負う農家の女と手伝いの子供が立っています。浮世の富士世界を描く際、北斎は、敢えてこのような人物を配して、女人禁制の富士とは異なる平等世界というものを見せているようです。

 なお、右手丘陵の畑地に生える松のやや左への傾きは、富士神霊の当体がこの画中の空白部分にあることを暗示させる、北斎考案の手法でしょう。この牧歌的な農村風景こそが、富士信仰の世界を具現化させるものなのです。逆に、富士がこの丘陵のこぶの一つに見えてくるではありませんか。

*掲載の資料は、アダチ版画です。

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