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冨嶽三十六景「常州牛堀」

Hokusai15  早朝の霞ヶ浦を行く苫舟が描かれています。先の「上総ノ海路」と比べると、舟が対角線方向に位置し、動きのある構図と言えます。その点で、美術的には、一段上の藍摺り作品です。しかし、三角形を使って、庶民が生活する浮世に富士世界を展開する趣向においては、同一のものと位置づけられます。

 苫舟は、風雨を防ぐためにすげやかやを編んで作ったむしろを被せた舟のことですが、その被せられたむしろの形が富士の雪と対照されていて、そこに浮世の富士が描かれていることが判ります。舟上にある三角形(△)=世事の間に出入りする二人は、もちろん、降臨する富士神霊と触れる者で、米のとぎ汁をこぼす様は白糸の滝に見立てられているのかもしれません。その音に驚いて飛び立つ白鷺の羽音が聞こえてきそうです。舟上での暮らしが垣間見えていて、その生活風景が富士の一景をなしているのです。

 苫舟の屋根が富士のようなのではなくて、富士が苫舟の屋根のようなのです。浮世絵を見る視点を、近景から遠景にもっていくのが、浮世絵を見る庶民視点の移動順序なのではと考えています。なお、後に検討する予定ですが、湖沼と富士とは密接な関連があることを予告しておきます。

*掲載の資料は、アダチ版画です。

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